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東京地方裁判所 昭和58年(特わ)2763号 判決

本店所在地

東京都青梅市成木五丁目一三九〇番地

成木開発株式会社

(右代表者代表取締役木下佐一)

本店所在地

東京都青梅市成木五丁目一三九二番地

株式会社成木商事

(右代表者代表取締役木下直)

本籍

東京都青梅市二俣尾三丁目五七二番地の一

住居

同都同市二俣尾三丁目五七五番地

会社役員

木下佐一

大正一二年一〇月二日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

(一)  被告人成木開発株式会社を罰金二八〇〇万円に、同株式会社成木商事を罰金六〇〇万円にそれぞれ処する。

(二)  被告人木下佐一を懲役一年六月に処する。この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社成木開発株式会社は、東京都青梅市成木五丁目一三九〇番地に本店を置き、砕石製造等を目的とする資本金二、六〇〇万円の株式会社、被告会社株式会社成木商事は、同市成木五丁目一三九二番地に本店を置き、砕石販売等を目的とする資本金一〇〇万円の株式会社であり、被告人木下佐一は、右成木開発株式会社の代表取締役及び右株式会社成木商事の実質経営者たる取締役として右各会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人木下佐一は、右各被告会社の業務に関し、各会社の法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における被告会社成木開発株式会社の実際所得金額が一億三五八四万九五六六円(別紙1修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年一〇月二五日、東京都青梅市東青梅四丁目一三番四号所在の所轄青梅税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一八五八万九七五八円でこれに対する法人税額が六三四万三三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五八年押第一六六一号の一)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五三二四万七三〇〇円と右申告税額との差額四六九〇万四〇〇〇円(別紙4税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における被告会社成木開発株式会社の実際所得金額が七九〇五万七九四二円(別紙2修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年一〇月二八日、前記青梅税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四五二万一〇二九円でこれに対する法人税額が九〇八万三九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の二)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三一九八万九〇〇〇円と右申告税額との差額二二九〇万五一〇〇円(別紙4税額計算書参照)を免れ、

第三  昭和五六年九月一日から同五七年八月三一日までの事業年度における被告会社成木開発株式会社の実際所得金額が一億六二〇〇万一七三三円(別紙3修正損益計算書参照)あったのにかかわらず。同五七年一〇月二六日、前記青梅税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九〇七五万七五四四円でこれに対する法人税額が三六二三万三八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の三)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六六一四万四二〇〇円と右申告税額との差額二九九一万〇四〇〇円(別紙4税額計算書参照)を免れ、

第四  昭和五五年五月一日から同五六年四月三〇日までの事業年度における被告会社株式会社成木商事の実際所得金額が三五九六万八〇八〇円(別紙5修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年六月三〇日、前記青梅税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五四七万六七三一円でこれに対する法人税額が一五二万二三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の四)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一三九九万四九〇〇円と右申告税額との差額一二四七万二六〇〇円(別紙7税額計算書参照)を免れ、

第五  昭和五六年五月一日から同五七年四月三〇日までの事業年度における被告会社株式会社成木商事の実際所得金額が二五三八万六七七八円(別紙6修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年六月二三日、前記青梅税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四一七万五五七五円でこれに対する法人税額が一一七万二〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の五)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額九五九万四二〇〇円と右申告税額との差額八四二万二二〇〇円(別紙7税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人木下佐一の

(イ)  当公判廷における供述

(ロ)  検察官に対する各供述調書

一  原嶋正太郎(三通)及び山本明(一通)の検察官に対する各供述調書

判示第一ないし第三の事実につき

一  青梅税務署長作成の証明書

一  収税官吏作成の左記調査書

(イ)  売上高調査書

(ロ)  材料仕入高調査書

(ハ)  期首材料たな卸高調査書

(ニ)  期末材料たな卸高調査書

(ホ)  減価償却費調査書

(ヘ)  修繕費調査書

(ト)  役員報酬調査書

(チ)  事務用消耗品費調査書

(リ)  租税公課調査書

(ヌ)  接待交際費調査書

(ル)  保険料調査書

(ヲ)  備品消耗品費調査書

(ワ)  受取利息割引料調査書

(カ)  受取配当金調査書

(ヨ)  株式売買損益調査書

(タ)  貸付金利息調査書

(レ)  減価償却超過額認容調査書

一  検察事務官作成の報告書三通

一  成木開発株式会社の登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書三袋(昭和五八年押第一六六一号の一ないし三)

判示第四及び第五の事実につき

一  木下直の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の左記調査書

(イ)  売上高調査書

(ロ)  仕入高調査書

(ハ)  事業税認定損調査書

一  株式会社成木商事の登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書二袋(前同押号の四、五)

(法令の適用)

一  罰条

被告人木下佐一の判示第一の所為につき

行為時において昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条、一五九条一項に、裁判時において右改正後の同法一六四条、一五九条一項に各該当、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。

被告人成木開発株式会社の判示第一の所為につき

昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条、一五九条一項(二項を適用)

被告人木下佐一の判示第二ないし第五の所為、被告人成木開発株式会社の判示第二及び第三の所為並びに被告人株式会社成木商事の第四及び第五の所為につき

法人税法一六四条、一五九条一項(各被告会社につきそれぞれ一五九条二項をも適用)

二  刑種の選択

被告人木下佐一につき各所定刑中いずれも懲役刑を選択

三  併合罪の加重

被告人木下佐一につき

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(刑及び犯情の最も重い判示第三の罪に加重)

各被告会社につき

同法四五条前段、四八条二項

四  刑の執行猶予

刑法二五条一項(被告人木下佐一につき)

(量刑の理由)

本件は、各被告会社の代表取締役又は実質経営者たる被告人木下佐一において、各被告会社の業務に関し、合計一億二〇〇〇万円余りの法人税をほ脱したという事案であり、その脱税額は比較的高額であり、ほ脱率も低いとはいえないこと、脱税の動機においてとくに斟酌すべき事情がないことに照らし被告人らの犯情は軽視することができない。しかし、他面本件脱税の大半を占める売上除外については、特定の取引先に対する売上をそっくり帳簿から落すという方法によっているものの、右取引先と通謀するなど手のこんだ秘匿工作を講じたことはなく、したがって、その手段・方法は概して単純といいうるものであること、被告人らは本件脱税が摘発されるや、直ちにその非を認め、修正申告をして脱税にかかる本税及び附帯税を納付し、捜査及び公判を通じて犯罪事実を素直に認め、改悛の情を表していること、被告人らに前科・前歴がないこと等被告人らに有利な情状も認められるので、これらを量刑上斟酌し、被告人木下佐一に対してもしばらく刑の執行を猶予するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑、被告人成木開発株式会社に対し罰金三三〇〇万円、被告人株式会社成木商事に対し罰金七〇〇万円、被告人木下佐一に対し懲役一年六月)

検察官上田勇夫、弁護人浅見敏夫各出席

(裁判官 小泉祐康)

別紙1

修正損益計算書

成木開発株式会社

自 昭和54年9月1日

至 昭和55年8月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

成木開発株式会社

自 昭和55年9月1日

至 昭和56年8月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

成木開発株式会社

自 昭和56年9月1日

至 昭和57年8月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙4

税額計算書

成木開発株式会社

〈省略〉

別紙5

修正損益計算書

株式会社成木商事

自 昭和55年5月1日

至 昭和56年4月30日

〈省略〉

〈省略〉

別紙6

修正損益計算書

株式会社成木商事

自 昭和56年5月1日

至 昭和57年4月30日

〈省略〉

〈省略〉

別紙7

税額計算書

株式会社成木商事

〈省略〉

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